栗本薫や田中芳樹、西尾維新を語る「言葉」がほしい!

いやまー何がいいたいかというと、なんとなくわかってきた、、、そうか、「ある基準」を超えると、そもそもカテゴリーという枠を超えるオリジナリティを感じるものなので、一つのジャンルで言い難くなるんだな。栗本薫の『猫目石』とか、推理小説だ?といわれると、たしかに名探偵・伊集院大介シリーズなんですが、でもあれって違うよなー。とかそういう感じ。ああ、わかってきた、そうか、そうだライトノベルを低く見ているからとかそういうことではなく、ある作品は、その作者がちゃんと世界観を作り込んで基準値を超えると、カテゴリーで話がしにくくなるんだ。つまりは、そういうレベルだってことだ。

 うんうん、わかるわかる。いや、たぶんわかる。

 ようするに「ジャンルで作品をカテゴライズすることの限界」という話ですよね?

 あのですね、日本のエンターテインメント批評には、ある作品をジャンルに分けて、その文脈で評価する傾向があると思うのですよ。

 まず、SFならSF,ミステリならミステリ、歴史小説なら歴史小説、と、あるジャンルに振り分けて、それから分析する。

 でも、ペトロニウスさんがいうように、時々、ジャンルの枠組みで捉えきれない作家が出て来ることがある。

 奈須きのこ辺りはその典型で、たとえば『空の境界』は「奈須きのこというジャンル」としかいいようがない代物だと思う。

 笠井潔はそれを「伝奇小説」という枠組みで捉えなおそうとしたけれど、ぼくにはあまり巧く行ったようには思えない。やはり、奈須きのこの作品世界は独自すぎて、あるジャンルの文脈で捉えきることができないんだと思うんですよ。

 同様のことが西尾維新とか、あるいは森博嗣辺りにもいえる。

 彼らの場合、奈須きのことは違って初めは本格推理作家としてデビューし、脚光を浴びたわけだけれど、最近の作品は以前に比べ批評家に取り上げられることが少なくなってきている気がする。

 それは、彼らの作品の質が落ちたということではないでしょう。ただ、その作品の魅力が、本格ミステリというフレームでは捉えがたいものになって来ている、ということに過ぎない。

 たしかにたとえば森博嗣のGシリーズ以降の作品は、本格ミステリという価値観で見るならば、S&Mシリーズほどの斬新さをもたないかもしれない。

 でも、それで作品がつまらなくなったわけじゃない。ジャンル批評ではなかなかその本質を抉りがたい書き方になってきているのだと思う。

 二階堂黎人さんが、どこかで、批評家はなぜ最近の森作品を取り上げないのか、と書いていた記憶があるけれど、つまりはそういう事情だと、ぼくは思っています。

 で、もう少し前の世代でいうと、田中芳樹栗本薫菊地秀行といった作家が、ジャンルの枠外で書いている作家の代表格といえるでしょう。ぼくはほとんど読んでいないのだけれど、夢枕獏もそうかな。

 これらの作家は、ベストセラーを連発していながら、批評的な読み込みが比較的少ない印象がある。もちろん、絶無ではないだろうけれど、その業績の巨大さに比べると、やはり十分な「読み」はなされていないといえるのではないでしょうか。

 栗本の『グイン・サーガ』、菊地の『吸血鬼ハンター』、田中の『創竜伝』に対する、プロの批評家による精密で詳細な「読み」は、質量ともに不足していると思うのですね。

 これらの作品を、たとえばライトノベルとか伝奇小説といった文脈で語ることも不可能ではないでしょうが、おそらく、そこには限界がある。

 『〝D〟』をライトノベルと呼ぶのは、ちょっとねえ、みたいな感じ、ありますよね。作品の存在感がジャンルの枠を乗り越えてしまっている、といえばいいか。

 ま、だからこそ、ファンタジーブームが終わっても『グイン・サーガ』は人気だったし、伝奇小説ブームが終わっても『創竜伝』は売れつづけているのでしょうけれど。

 で、このあいだの栗本薫追悼ラジオで少しふれたのだけれど、栗本の、特に後期の作品は明らかにジャンルの垣根を超えています。

 『グイン・サーガ』にしても、ヒロイック・ファンタジーという文脈だけで読み取ることは明らかに無理がある。そうやって読もうとすると、大して面白いものが読み取れないのですね。

 精密に読み取るためには、ジャンルに依存しないリテラシー(この場合は読解能力のこと)、SFをもファンタジーをもBLをも超えた批評の「言葉」が必要となる。

 ぼくはそういう「言葉」がほしい。

 『グイン・サーガ』も、『猫目石』も、『マヴァール年代記』も、『七都市物語』も、『夜叉姫伝』も、『ブルー・マン』も語りえる「言葉」。ジャンルを超越した作家や作品を比較検討しえる「言葉」。

 それがほしい。

 ペトロニウスさんの「言葉」に、非常に共感を覚えるのは、ぼくの求める「言葉」に近いものを実現しているからだと思います。そうでなくちゃ、と思うわけです。

空の境界(上) (講談社文庫)

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クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社文庫)

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豹頭の仮面―グイン・サーガ(1) (ハヤカワ文庫JA)

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猫目石〈上〉 (角川文庫)

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七都市物語 (ハヤカワ文庫JA)

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マヴァール年代記(全) (創元推理文庫)

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